298話 あさりの赤い靴②

ていうかこの霊、眉毛がない

前回からの続きです。あさりに取り憑いている霊の正体が明らかになります。

「おおきい ばばこ」と読みます

タタミとママは、あさりに取り憑いている霊を見て「ゴリラの霊!」と騒ぎます。すると霊は

「ゴリラ〜、しつれいね〜。わたしは白鳥よ。大木井馬場子よ。」

と、説明し始めます。いやでも、完全にゴリラですよ。

馬場子は小さい時からバレエを習い、世間から「天才」と言われるほどのバレエの実力があったにもかかわらず、身長があまりに高くなりすぎたために(192センチ)バレエを諦めざるを得なくなってしまったのです。そして馬場子はそれを苦にして自ら命を絶ちます。しかしやはり馬場子はバレエの代表作の一つである「ジゼル」の公演に出られなかった事が心残りで、霊になって小さい体を探し続けていたのです。あさりは馬場子のトウシューズを拾った事で取り憑かれてしまったというわけです。

その後、タタミとママの制止も虚しく、馬場子に取り憑かれてるあさりは、かつて馬場子が在籍していたバレエスタジオへ。あさりはジゼルの公演に出せ!と先生に直訴。そしてその場でジゼルを踊り、披露します。踊っているのはあさりなわけですが、「ものすごく悪いプロポーション」ながらも馬場子が取り憑いているため、皆が息を飲む完璧な踊りを披露します。誰もが認めざるを得ない実力を披露し、ジゼルの公演に出る願いが叶うか‥と、思った瞬間、予想だにしないアクシデントが起きます。

バレエを絡めたこんな面白い少女漫画ある?

久しぶりに読み返しましたが、長編やる度にどんどんバージョンアップされてますね。もともとバレエが好きという事もあり、この話もすごく評価が高いです。

バレエ+ギャグ+ホラーって図式ですが、ベースはあくまでバレエです。霊が出るとはいっても、馬場子のビジュアルが完全にゴリラなんでホラー様子はほんの少しにしか感じません。ギャグ要素は通常と変わらずふんだんにあり、テンポも良し。「あさりの体を利用した馬場子」VS「馬場子を追い出そうとするタタミとママ」の攻防戦が描かれてますが、個人的にはこのやり取りが一番笑いどころが多いと思います。

しかしとにかく馬場子の見た目が強烈すぎます。ホラー回ではいつも美女の霊が出てきてましたが、今回はゴリラですからね(しつこい)。大木井馬場子という名を初めて聞いた時、タタミとママは「名は体を表す」という言葉を使って笑いますが、この名前(と身長)はやはりこの方から来てるんでしょうね。

馬場という苗字に「子」をつけるセンス

しかしバレエの実力は相当なものだとわかる描写があり、実在するバレリーナで言うと吉田都さんとか、そういうレベルって事かも(でもゴリラ)。

まさにロイヤルの至宝

馬場子に取り憑かれてる時のあさりの姿は小さい体で巨大なトウシューズを履き、しかもいつものあさり以上に凶暴、という控えめに言って化け物。馬場子ピンでも強烈なビジュアルですが、馬場子+あさりでさらにビジュアルに化学反応が起きてます。そしてこの異様な姿で踊りを披露しますが、これがまさかの感動もの、という展開。そして馬場子のバレエ愛が非常に伝わります。室山先生もバレエが好きだと言ってましたが、このシーンを見るとそれも納得です。真っ黒の背景にしてるのも何だか時間が止まってる雰囲気が出てますね。

タイトルにある通り「赤い靴」のようにあさりが踊るという話にしたいわけなので、霊に取り憑かれるという手法はうってつけだと思います。最後の最後で予期せぬアクシデントが起こるんですが、これも「取り憑いたのがあさりだったばっかりに」というものとして描かれてます(絵的に色々突っ込みどころはあるが)。

長編の度に同じコメントしてる気がしますが、敢えて言いますね。
室山先生、お見事です。

バレエの代表作である「ジゼル」という作品の筋書きもちゃんと書かれているんですが、この話を読んでジゼルを知りました。名作と名高い作品ですが、ジゼルと聞くと脳裏にはすぐ馬場子が思い浮かぶようになりました。とりあえずこの後動画で見てみようと思います。

これで19巻最後になるんですが、巻末におまけ漫画がついてます。室山先生の日常が自虐と共に描かれててなかなか面白いです。しかしリアルタイムで読んでた時はまだ小さかった私も今はこの時の室山先生よりはるかに年上か‥と思いました。


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